交感神経-免疫のクロストーク
交感神経はストレスや情動による中枢神経の活動性の変化を全身の臓器へ伝達する主要な経路である。
神経系による免疫調節においても中心的な役割を果たしていると考えられる。
ストレスと免疫との関連はあるのか?
①交感神経によるリンパ球の体内動態の制御
交感神経興奮
→β2アドレナリン受容体リンパ球に出現
→血液とリンパ球液のリンパ球が急速に減少
リンパ液の流れ
引用:中外製薬
リンパ球は
リンパ節→リンパ液
→リンパ液と血液が合流
→血流→リンパ節(再び戻る)
というかたちで全身を巡回する。
β2アドレナリン受容体刺激→リンパ球減少のメカニズムは、交感神経からの入力がリンパ球に発現するβ2アドレナリン受容体を刺激することによって、リンパ球のリンパ節からの脱出を抑制することが示され、交感神経がリンパ球の体内動態の恒常性を保つ役割を果たしている。
リンパ球がリンパ節から脱出する頻度は、リンパ節からの脱出を促す信号と、リンパ節への保持を促す信号のバランスで決定される。
β2アドレナリン受容体刺激
→ケモカイン受容体(CCR7, CXCR4)感受性増加
※ケモカイン受容体
細胞の移動を促す分子であるケモカインの受容体。
リンパ球のリンパ節への保持を促す信号を受け取る。
β2アドレナリン受容体とケモカイン受容体の間には情報のやりとり(クロストーク)があり、リンパ球のリンパ節への保持が促される結果、リンパ球のリンパ節からの脱出が抑制される。
「神経-免疫コンバーター」
β2アドレナリン受容体とケモカイン受容体は複合体を形成する。
=分子複合体
神経伝達物質受容体と免疫受容体の分子複合体が、神経系からのインプット⤵️を
免疫系からのアウトプット⤴️に変換する
「神経-免疫コンバーター」として機能する。
③β2アドレナリン受容体を介した炎症の制御
炎症性疾患のマウス実験において
β2アドレナリン受容体の刺激は炎症を抑える。
→炎症性疾患の病気の進行を抑えられる。
病原性リンパ球のリンパ節からの脱出が抑制され、炎症部位への到達が妨げられる。
β2アドレナリン受容体の欠損は炎症を維持。
→病状が重くなる。
病原性リンパ球がリンパ節から脱出しやすく、炎症部位に到達しやすい。
βアドレナリン受容体からの入力は炎症を沈静化する方向に作用し、炎症性疾患の病態に関与する。
まとめ
交感神経の興奮は、炎症性疾患の症状が「良くなる」ことを示唆している。
免疫反応が過剰におこってしまった結果が炎症性疾患である。
交感神経はリンパ球の免疫反応を落とすことで、炎症を落ち着かせる機能を果たしている。
しかし、病原体の感染の観点におくと炎症性疾患で炎症の誘導に関わっていたリンパ球は、感染症という局面では病原体の排除にはたらく有益なリンパ球であり、それらが病原体の侵入部位に到達できなくなることは、病原体の排除を妨げ、感染症の治癒を遅らせることにつながる。
交感神経によるリンパ球の体内動態の制御は、ストレスが加わった際に感染防御という免疫の本来の機能が損なわれる、つまり「ストレスによって免疫力が低下する」ことの一因となる可能性がある。
交感神経→炎症を抑える、免疫反応を低下する。
逆説的に免疫が低下する因子があれば、免疫を高めるために副交感神経を刺激する。
ただし、副交感神経優位になりすぎると炎症反応が起きやすくなると考えられる。
安静にしてると痛みの閾値が低下する要因にも影響する?
あくまで単純な考えなので、これらに多因子が絡むとより複雑になる。
自律神経のバランス、免疫と炎症のバランスなど様々な身体バランスを考えなければならない。
引用:「病は気から」の根拠を実験的に証明
交感神経による免疫制御の
メカニズムの一端を明らかに
Nov. 27, 2014