サプリメントの正体
“サプリメントの正体”
▶︎栄養不足が露呈している現代人においてサプリメントは必要なのか否か。
サプリメントの栄養素の含有率はまともなのか。
粗悪なものも多いのではないか。
製造過程はどうなのか。
それらをどのように判断するべきか。
様々なサプリメントの謎を解き明かしていく本書。
その中で気になったものをいくつか紹介します。
○サプリメントの製造過程
サプリメントの選択で大事なのは医者や管理栄養士などの医療関係者の監修ではなく、製造過程、生産管理がきちんとしているかどうか。
医療関係者はサプリメント製造の専門家ではない。
工場では発注内容に沿わずに、手抜きをしたり、原価を削ったりすることが実際にある。
○トクホの正体
「特定保健用食品(トクホ)」は健康食品であり、消費者庁が認可している。
医薬品とはまったくの別のものである。
症状を改善させる、緩和させる目的であれば、医薬品の方が精密な臨床試験が行われていて、きちんと効くことが確認されている。
尚且つ、健康保険により3割の価格で手に入る。
トクホに使われている成分の中には、医薬品の候補だったもの、効能が認められなかったために医薬品になれなかったものが多々ある。
いわば、三軍、四軍である。
それよりも確実な一軍(医薬品)がいるのだから、それを使うのが一番早く、安く、解決できる。
効果の不十分なサプリメントを自己判断で飲み続けることで、治療のタイミングを逃し、取り返しのつかないところまで悪化してしまうのは怖いことである。
○「機能性表示食品」は国の審査ナシ
機能性表示食品は
メリット
・エビデンスに基づいて「何の役に立つのか?」が明確に記載される
・消費者庁のウェブサイトで、誰でも情報が確認できる
デメリット
・消費者庁に届けられている情報に比べて、広告の表現が大げさになりがち
・最も大切なはずのビタミンやミネラルが対象から外れている
▶︎特定機能食品(トクホ)は国が審査をしている。(消費者庁)
栄養機能食品は届出はいらない。
機能性表示食品は届出が必要だが、審査はない。
唯一審査があるトクホでさえ厚生省ではなく、消費者庁が管轄していることを考えれば身体の不調、予防に関しても病院・医師に相談したほうがいい。
自己判断で健康のためにやっていることが、逆に悪化させる原因となっている可能性もある。
○ウコン
ウコンには「クルクミン」という抗酸化成分が含まれていて、肝臓を炎症から守る作用がある。
ただし、ウコン(秋ウコン)には鉄分が含まれていることが多く、肝障害がある場合、鉄分は肝障害を悪化させてしまうことがある。
日本では約1000人が脂肪肝である。
「肝臓は沈黙の臓器」といわれ、自覚症状がなくても、病気を発症していることもある。
「肝臓にいい」と思って飲んでいるつもりが、逆効果でかえって肝臓を悪化させることになりかねない。
○人体に「ビタミンC」が切実に必要な理由
犬や猫など、ほとんどの動物はビタミンCを自分で作り出すことができる。
しかし、人間には作り出すことはできない。
さらに、ビタミンCは働き者でらかなりの量が必要なため、人体に入るなり、各臓器で「取り合い」状態になる。
特に、「副腎」「免疫細胞」「眼」はビタミンCを大量に必要とし、優先的にビタミンCが回される。
①副腎
副腎はコレステロールを原料に、さまざまなステロイドホルモンを作る。ステロイドホルモンはアトピーの薬として認識されていることが多いが、元々体内に多様な顔ぶれが存在し、全身の機能を保つために重要な仕事をしている。
(代表的なステロイドホルモンは、コルチゾール、男性ホルモン、女性ホルモン)
この多種多様なステロイドホルモンを作る過程で、副腎は多くのビタミンCを必要とする。
ステロイドホルモンを合成する酵素はビタミンCのサポートによって、活性を維持している。また、ホルモンを生成する過程では大量の活性酸素が発生している。副腎はこの活性酸素によるダメージを防ぐためにも、抗酸化物質であるビタミンCを必要としている。
ストレスにさらされる機会が多い現代人は、抗ストレスホルモンのコルチゾールを生産するために副腎を酷使している。
②免疫細胞
外敵と戦う際には大量の活性酸素が発生する。それゆえに自分の身を守るためのビタミンCを必要とする。
いってみれば“防弾チョッキ”の役割です。
③眼
眼は体の中で唯一、外からの光に対して皮膚のガードがなく、剥き出しになっている臓器である。紫外線に直撃されるため、その害を防ぐビタミンCが必要である。ビタミンCを十分に摂取すると、白内障のリスクが低下することがわかっている。
ほかに、大量のエネルギーを消費する「脳」も大量のビタミンCを要求する。
体内に十分なビタミンCがあるのとないのでは、身体の状況は大きく変わる。
ビタミンDの効果は免疫力のアップである。ビタミンDをしっかり摂るとインフルエンザにかかりにくいという実験データがある。慈恵医大の調査では、6歳から15歳の子供たち、334人を2つのグループに分け、一つのグループには「ビタミンDの錠剤」を摂ってもらい、もう一つのグループには「ビタミンDが入っていない錠剤(プラセボ)」を飲んでもらった。
その結果を比較したところ、ビタミンDを飲んだグループがインフルエンザを発病した率は10.8%で、飲んでいないグループ(18.6%)の約半分だった。
またビタミンDはガンの発症を下げる、アルツハイマーの予防、高血圧などの循環器疾患をはじめとする生活習慣病にも関連している。さらにアレルギーの抑制効果もある。
ところが多くの日本人の場合、ビタミンDが足りていない。日本人女性の3人に2人はビタミンD不足、4人に1人は欠乏しているというデータがある。
ビタミンDは皮膚に当たる紫外線の働きによって作られる。しかし最近の日本の女性はシミを気にして、紫外線を避けるための化粧品や日傘を使うことが多いため、さらに日光が皮膚に当たる機会が減っている。
そのため、ある程度意識して日の光を浴びたり、ビタミンDを豊富に含む食品を摂るように意識しなければならない。
サプリメントでビタミンDを補給してもよいが、メラニン色素の少ない手のひらを日光に当てたりしらすや鮭、干し椎茸を食べたりするのも手軽な方法である。
○鉄
貧血予防に欠かせない「鉄」も不足しやすく、積極的に摂りたい成分である。特に女性は生理があるため、鉄をしっかり摂る必要がある。
思春期の女の子の場合、生理がはじまると鉄の消耗がどんどん増える。そうでなくても、成長期のため、体に必要な鉄の量が増えていく。さらに、激しい体を動かす運動部に所属している子は、特に鉄不足になりやすい。
運動するとき、特に長距離を走る場合にな、足の裏の血管を通る際に赤血球がダメージを受けやすいため、鉄の消耗が激しくなってしまう。そのため、スポーツをしている女の子は、十分に鉄分を摂る必要がある。
鉄は赤血球に含まれるヘモグロビンの材料になり、全身に酸素を運ぶ働きをしているほかにも、多様な働きをしている。
最も大切なのは、細胞中のミトコンドリアでエネルギーを作ることである。十分な鉄がなければ、せっかくの食べ物をエネルギーに変換することができない。すると寝起きが悪かったり、頭痛、肩こり、冷え、気分が落ち込む、イライラするなど、様々な症状が出てしまう。
さらに鉄が足りないと、脳内の神経伝達物質(ドーパミン、セロトニンなど)を作ることができない。神経伝達物質が不足していると、物覚えが悪くなったり、気持ちが落ち込んだりする。脳が正常に機能するために、鉄は不可欠である。
他にも鉄は「活性酸素」の消去の役割がある。「抗活性酸素」の構成要素にもなっている。鉄の不足は身体の抗酸化力の低下を招き、老化を促進する。
ただし、鉄は諸刃の剣であり、過剰に摂取すると活性酸素の発生源になるため、「適量」の摂取が大事である。
「非ヘム鉄」
主に穀物や野菜など植物性食品に含まれる
「ヘム鉄」
肉やレバーなどの動物性食品に含まれる
「非ヘム鉄」の素材には、クエン酸鉄、グルコン酸鉄などがある。医薬品の鉄剤としてよく使われる「フェロミア」はクエン酸第一鉄である。これは、鉄が剥き出しの状態なので、胃や腸に負担をかけやすく、人によっては気持ちが悪くなる場合がある。
「ヘム鉄」は、「非ヘム鉄」と異なり、鉄が剥き出しではなく、ポルフィリンという分子にくるまれているため、胃や腸にかける負担が少なくわ副作用が起こりにくい。また、ヘム鉄の方が吸収率も高く、非ヘム鉄に比べ、5〜10倍もよいとされている。
不調の原因が鉄の不足にあることが明らかな場合は、医師に鉄を補給するための薬を処方してもらうのが第一選択である。
ただし、医薬品は「非ヘム鉄」のため、胃腸の調子が悪くなるなどして継続することができないことがある。その場合は、ヘム鉄のサプリメントを使用するのが良い方法である。
ただし、注意すべきは、市販のサプリメントには「非ヘム鉄が主体で、ヘム鉄をちょっぴり加えた」だけなのに、パッケージには「ヘム鉄」と書いてあるものが多い。
ヘム鉄は殆どが豚の赤血球を原料として作られているが、鉄の含有率は低く、1〜2%しかない。
小さな粒でたくさんの鉄が摂れるように表記してある場合、主な原料は「非ヘム鉄」と判断できる。それなら、医薬品の鉄剤を使う方が安くて、品質も信頼できる。ヘム鉄が多く含まれている製品でなければ、サプリメントを使う意味がない。
輸入品の「医療機関向けのヘム鉄のサプリメント」と標榜していた製品が、実は「鉄粉」のサプリメントだった事例がある。単体の鉄は吸収しにくく、胃酸分泌が弱い人には特に厳しい。
こうした虚偽表示が堂々と行われていることがあり、サプリメントの選択はなかなか難しい。
○癌になった原因を考える。
原因は大きく2つあるようだ。
一つは「血行障害」。血行が不良で酸素の供給が不十分な環境では、細胞は生きるのが大変である。そこで生まれた「低酸素状態でも生き延びる能力を身につけた細胞」というのが、癌の角度を変えた見方である。
もう一つは慢性の「炎症」がある場合である。炎症によってある部分の細胞が死んでしまうと、まわりの細胞が分裂して、開いてしまった穴を埋める。細胞が分裂する際には、遺伝子の端にある「テロメア」という部分が短くなる。テロメアが限界を超えて短くなると、細胞はそれ以上分裂することができない。
慢性の炎症があり、その部分の細胞が次々に死んでしまうと、周囲の細胞が一生懸命細胞分裂して、その部分を埋めないといけない。テロメアはどんどん短くなり、細胞は分裂できなくなる。そこでできてしまった傷を埋めるために、テロメラーゼをもう1度活性化させて、再び分裂ができるようになった細胞、それが癌である。
低酸素状態で生き延びるために生まれた癌、慢性の炎症を修復する過程で生まれたガン、過酷な環境下でなんとか生き延びようとしてある細胞、それがガンだという見方もできる。
これらを予防することが大事である。
有酸素運動をして、血行をよくすること。運動するかしないかでは、毛細血管の発達が全く異なり、運動して体内に酸素を行き渡らせる。
肥満や高血糖は慢性炎症に繋がりやすいため、避けるべきである。
○現代人は栄養失調
「新型栄養失調」あるいは「現代型栄養失調」
→三大栄養素である、炭水化物、タンパク質、脂質は十分足りているが、微量栄養素であるビタミン、ミネラルが不足していること。
▷若い女性の深刻な栄養欠乏
栄養素の不足で体調を崩している人はきわめて多い。
特に若い女性に多く、鉄不足、ビタミンB群、亜鉛が不足している。
これらの不足があると、朝起きられない、だるい、疲れやすい、冷え性などさまざまな症状が起こる。慢性頭痛や生理痛で悩む人も多い。
不調が当たり前となり、自分自身が認識していない人もいる。
若いのにまるで高齢者のような体調で暮らしている。
不定愁訴は原因不明とされることも多いが、実は栄養不足から起こっているものもある。
栄養素を摂取することの重要性を再認識する必要がある。
○加工食品の「大きな欠点」
▶︎ 現代人に多い、“食事でかかる新型栄養失調”。
食べているのに栄養失調にかかる。
つまり現代人は、ろくなものを食べていないということ。
その要因の一つが加工食品である。
コンビニ弁当、宅配弁当、テイクアウトの惣菜、レトルト・インスタント食品、ファーストフードなと。
これら加工食品に含まれるミネラルはきわめて貧弱である。
総務省が発表している「家計調査」を見ると、21世紀になるとともに、日本の家庭は生鮮食品よりも加工食品や外食に多くのお金を払うようになっている。
農林水産省の推計でも、私達の口に入る農作物の8割(金額換算)が、加工・調理されたものになっている。
つまり、ビタミン、ミネラルの足りない「新型栄養失調」が起こる原因は「加工食品」が日常的に私たちの食事に入り込んできたことにある。
加工食品には「ビタミンやミネラルの欠落」という大きな欠点が潜んでいる。
コンビニエンスストアで、1日の食事を済ませた場合に、どのくらいのミネラルが摂取できるかを実測したところ、カルシウム、マグネシウム、鉄、亜鉛、銅の5つの必須ミネラルの全ての摂取量が、20代女性の推定平均必要量に全く達していない。
朝は菓子パン、昼はファーストフード、夜はコンビニ弁当。
命を削る食事である。
〈まとめ〉
※加工食品が中心の食生活は、栄養失調に陥りやすい
※このリスクを避けるには、旬の食材を調理して食べる機会を増やす
※サプリメントは粗悪品が多いので、自分で選ばず専門家に相談する