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これから「健康」の話をしようか

理学療法士。健康、医療、読書のことについて書いていきます。

鎮痛剤使いすぎ問題

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関節疾患等の筋骨格系疾患では、患者の疼痛の訴えが主訴となる。

それにともない医療では、患者が来院して痛みを訴えるとぼぼ必ず“鎮痛剤”処方する。

過剰な鎮痛剤を処方する医療は、正常性の医療ではなく、患者の痛みを増悪し、医療費を圧迫し、貴重な医療資源を無駄にしていると言われている。

 

“痛みは体を守るための生体防御性の信号”である。

これをベースに考えれば、痛みはなぜあるのか?

それを鎮痛剤で抑え込むことはいいことなのか?

なぜ痛みの“原因”ではなく、痛み(結果)に治療をするのか?

私たちは今一度、鎮痛剤の使用について考える必要がある

 

○痛みに対する非外科的介入

筋骨格系(首、肩、腰、膝などの関節痛など)の疼痛管理コストは上昇している。

患者は、鍼治療、徒手療法、筋膜リリース、トリガーポイント、注射、服薬などの無数の非外科的医療オプションが、単独で問題を「解決」すると誤解されている。

 

新潟大学名誉教授で医師の岡田正彦氏は、「ドイツや北欧など、ヨーロッパの一部の国では薬を極力使わず、予防に力を入れている。日本と比べてあまり病院にかからず、薬にも頼らない傾向がある」

「かぜ薬のCMを例に取っても、つらい症状が薬でスッキリ治るというのがお決まり。そういうものを子供の頃から見ているので、日本人は何かあれば薬に頼るよう、巧妙にすり込まれている。実際、日本人がよくのむ薬のなかには海外ではつかわれていないものも多くある」

医療経済ジャーナリストの室井一辰氏は「代表的なのが『エヌセイズ(NSAIDs)』を成分とする鎮痛薬。たとえば、『ロキソプロフェン』『アスピリン』『セレコックス』などは、日本でもよく使われているが、使いすぎると胃を荒らす副作用があるために極力、アメリカでは使わないようになってる。加えて『アスピリン』系の鎮痛薬は喘息の副作用もあり避けられる。」

鎮痛薬「プレガバリン」(商品名「リリカ」)は、腰痛や坐骨神経痛の痛みによく効くとされ、国内で販売されるすべての薬剤のなかで売り上げトップ(2017年、937億円)だ。しかし、アメリカやヨーロッパでは使用用途が細かく制限され、多用されていない。

「リリカ」の画像検索結果

「米メリーランド大学医学部の研究者らは、腰痛や坐骨神経痛への鎮痛効果はまったくないか、あっても最小限だとしている。そればかりか、過剰に処方されることで、めまい、不安、うつ病を引き起こす危険性まで指摘されている」

○姿勢は「異常」なのか?

筋骨格系の痛みは一般的である。最大70%の人が肩の痛みを経験し、90%が人生のある段階で腰痛を経験する。

これらの不快な症状は「正常な」発生と考えることができる。

 

 姿勢異常では、強直性脊椎炎、重篤な脊柱後弯症、脊柱側彎症との関連がある。

しかし、筋骨格系疾患の大半は、ほとんどの姿勢「異常」は正常な変動である可能性が高く、痛みの有無に関わらない

 

構造の変化はMRI、エコー、CTにより、“痛みのない”「異常」とラベルすることがある。

椎間板ヘルニア、関節変性、脊椎症、野球選手の肩の関節唇の異常、ローテーターカフ腱の変性、膝の骨棘、軟骨損傷、骨髄病変、滑液炎、若者の股関節の関節唇涙。

これらの知見は、「異常」とラベル付けされた多くの変化が正常であり、痛みや症状と関連していない可能性があることを示唆している。

多くの介入は、正常な加齢に伴う変化を持つ人々、および症状の原因ではない組織に対して行われる可能性がある。

 

○患者ができること

・予想されるメリット、時間スケール、および害に焦点を当てて患者自身の症状のための様々な処方、施術、服薬について質問をする

・状態を管理するために何ができるかを尋ねる

・「様子を見てください」が適切なことなのかどうか尋ねる

・処方のメリット、デメリット、費用を十分に知らされた場合は、受容して良い

・医療制度を通じた経験や情報を共有し、ケアの提供の改善を促進する

 

→言われるがままに薬を飲むのではなく、それが自身にとって正しいことなのか、

メリットがあるのか、デメリットがあるのかを確認した上で処方を受ける。

医療機関が全て正しい判断を下しているとは限らない!

 

○医療従事者がやるべきこと

・不必要な評価、介入をしない。無駄な費用がかかることをさせない。

・低品質ケアの払い戻し

・高品質ケアの提供

・患者が合理的な診断、管理された処方、およびそれぞれの害、利益、および予想される結果を認識し、理解していることを確認する

・症状を説明し、管理のための推奨事項を作るときに感情的な言葉や時代遅れの説明を避ける

・患者にとって最も重要なものを確立し、意思決定の一環として議論する

・条件の自然な経過を理解する

・考慮すべき調査と考慮すべきでない評価、および評価結果の年齢に関連する規範を知る

・介入が患者に与える影響をエビデンスをもって評価する

 

まとめ

あまりにも多くの服薬は医療制度に負担をかけ、社会から資源を奪う。

過剰な投薬を減らすには、利害関係者(患者、臨床医、教育者、医療資金提供者、メディア、政策立案者、産業界、保険会社、政治家など)が、低リスクで費用対効果の高いケアを適切に優先する必要がある。

専門機関、政府機関、臨床医、患者は、協力して、利用可能な正しい医療について話し合い、合理的に決定を共有し、知識を学ぶ必要がある。

正しい医療をすることは、あまりにも多くの薬を提供することの弊害を減らしてくれる。

 

 

参考文献

The Elephant in the Room: Too Much Medicine in Musculoskeletal Practice

Published: Journal of Orthopaedic & Sports Physical Therapy, 2019 Volume:50 Issue:Pages:1–4 DOI: 10.2519/jospt.2020.0601

https://www.jospt.org/doi/full/10.2519/jospt.2020.0601